教授挨拶

教授挨拶

矢部 一郎 Yabe Ichiro

北海道大学大学院医学研究院 神経病態学分野
神経内科学教室 教授

この度、令和2年12月1日付で北海道大学大学院医学研究院神経病態学講座神経内科学教室教授を拝命致しました。

当教室は脳神経外科の諸先生からの支援を得て、1987年に脳神経外科から分離独立することに端を発しています。教室創設の後、初代教授田代邦雄先生、二代教授佐々木秀直先生のもと発展して参りました。田代先生、佐々木先生はじめ北大神経内科同門の諸先輩が築かれてこられた教室をさらに発展させるべく努めて参りますので何卒ご指導ご鞭撻を賜りますよう御願い申し上げます。

私の教室運営基本方針は、現在の教室基本理念でもある、北海道発の独創的な医学研究の実施、多彩な疾患に対応でき患者の人生に寄り添える専門医の育成、academic interestを持った専門医の育成、新規治療法に積極的に取り組む体制の整備、地域連携による診療協力と卒後研修体制の構築、のそれぞれを実践することにあります。これらを実現すべく、研究、診療、教育の充実を進展させて参ります。

研究については、患者から学び、患者に還元する研究を主軸とし、診療で目指す目標と緊密に関連した研究を推進していきたいと考えます。最近、自験例を契機に解明したBSN遺伝子変異に起因するタウオパチーに関する研究はその好例と考えます(Yabe I et al. Sci Rep 2018; 8: 819)。教室構成員の自主性も尊重しながら、教室責任者として、今と将来におけるその研究成果の必要性を常に自問自答しながら指導したいと考えます。私は今まで、主に臨床神経学と臨床遺伝学を研究の両輪としてきました。また、現在進捗中の札幌医科大学や旭川医科大学を含む道内多施設の協力下で実施している多系統萎縮症レジストリー研究や脊髄小脳失調症1型遺伝子治療開発研究をはじめ、たくさんの学内外の研究者と共同研究も実施してきました。これらを今後も発展させることはもちろん、今まで共同研究を行っていなかった領域の研究者とも、積極的に連携を図っていきたいと考えます。

診療については、神経内科は神経領域と内科領域の両面を兼ね備えた診療科として、多彩な疾患の診療を継続していきます。脳血管障害などの急性疾患と、認知症を含む変性疾患を中心とする慢性疾患の両者を高水準で診療し、北海道の“最後の砦”としての医療を適切に提供し、地域医療機関との連携や人材の育成を通して地域医療レベルの向上に寄与して参ります。私自身が中心となって構築してきた機能外科チームをモデルに、チーム医療体制を更に充実させ、働き方改革にも対応していきます。また、私は臨床遺伝子診療部部長として遺伝診療に深く関与してきました。ゲノム領域の研究や診療が、特にがん領域で発展しています。私は北海道大学病院が“がんゲノム医療中核拠点病院”として実施中のがんゲノム医療に関与させていただく機会を得て、この領域の進歩を目の当たりに致しました。認知症や神経難病領域では、複数の発症素因遺伝子が見出されつつあり、治療薬開発研究も進捗しています。近い将来、神経内科領域にもゲノム医療を基盤とした精密医療や先制医療が応用されることが予想されます。私は、今までの経験を生かして、この領域の発展に積極的に貢献したいと考えます。

最後に、私が最も重要と考える教育についてです。今や認知症、頭痛、てんかん、脳血管障害など日本国民の大多数が神経疾患に罹患する時代ですので、将来どの診療科を専攻するにしても、最低限の神経診察の素養が必要です。卒前教育では神経診察を含め神経学の基礎を丁寧に教えるように配慮します。卒後教育では新しい専門医制度に則った教育カリキュラムの充実が必要です。治療に時間を要する患者や難治性疾患も存在するため、その人の人生に寄り添うことができる神経内科専門医の育成も望まれます。そのためには内科全般に関する素養も重要ですので、これまで同様に内科専門医の育成にも努めます。神経内科専攻の後期研修医には診療を通じて教育することに加え、神経生理学、画像診断学、神経病理学、神経心理学などの専門研修も含めた研修プログラムを提供し、かつ多くの症例の診療を実践できるよう関連病院での研修も組み合わせて、神経内科専門医の養成に相応しい教育プログラムを提供します。また、その過程において大学院教育の充実もはかり、研究指向を持った神経内科医の育成を目指します。また、今までの経験を生かして遺伝医療を担う人材育成と教育にも努力致します。

私は教室構成員とこのような理念を共有し、内科領域と神経領域の両方の側面を持つ教室として学内外において連携しながら教室運営をしていきたいと考えます。そして、卒前および卒後教育に基づいて人材育成を行い、研究および診療を発展させ、国策として装備されることが予測されているゲノム医療等の新規治療法を積極的に導入し、精密医療、先制医療を実践することで神経疾患と筋疾患の克服を目指したいと考えます。

今後ともご指導ご鞭撻を賜りますよう、どうぞ宜しく御願い申し上げます。

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